Educacion Especial En Guatemala

グアテマラのろう教育

１． グアテマラの障害者の歴史と現状
　2002年の国立統計局（Instituto Nacional deEstadìstica）による人口、居住センサスによれば、グアテマラの全2,200.608世帯のうち、約6.2％にあたる135.482世帯が何らかの障害を持つ人を含むと言われている。聴覚障害者人口は2006年の政府調査によれば約7万3千人だが、一方で約64万人とも言われる。この差は「聴覚障害者」の定義の差であるものとされ、先天的な失聴あるいは幼少期の失聴により、手話などのろう文化を自然と享受してきた人のみを指すか、あるいは加齢による難聴も含む、医学的に聴覚に支障をきたしている人全員を指すかによって異なる（Parks,2008）が、グアテマラ政府が聴覚障害について明確な指標を持たず、またその全体像を把握していないことだけは明らかであると言える。また、障害者のうち53.8％が農村地区に住んでいると言われているが、都市部への人口の集中が著しいグアテマラにおいて、この数値は非常に高いものと思われる。グアテマラにおける障害者教育、ろう教育の現状については後述するが、教育機関のほとんどが都市部に集中していることから、教育を受けていない障害者がかなりの人数に上ることが容易に想像できるだろう。　グアテマラにおける障害者福祉の歴史は、1945年に始まる。この年、障害者福祉を目的とする初の民間非営利団体であるCPSG(Comitè Pro Ciegos y Sordos deGuatemala、後述)の創設から、60年代には初の私立ろう学校、盲学校が創設される。また、60年代から知覚障害児支援機関や成人向けのリハビリセンターも開設され、民間部門を中心に障害者福祉への関心が高まった。1977年には大学において特別教育のためのキャリア形成、及び言語療法や学術的指導が始まり、国内における障害者福祉専門家の育成に向けた教育環境の整備が始まった。
　このように、民間、及び研究機関における障害者福祉への関心の高まりと実践は、内戦が続く中も着実に行われていた一方、政府による行動は遅れをとっていた。1985年になってようやく、教育省内に障害児教育を専門とする特別教育庁が設立される（グアテマラ及び他の中南米諸国における障害者教育は、公的にはEducaciòn Especialと呼称されるため、本稿でもそれに倣い、以下特別教育と呼ぶ）。特別教育庁の主たる方針としてPAIME (Programa de Aulas Integradas del Ministerio de Educaciòn)及びPARME (Programa de Aulas Recursos del Ministerio deEducaciòn)の促進がある。PAIMEはいわゆるインテグレーション教育の流れを汲むもので、普通校に通常学級とは別の特別学級を設け、専門家による言語、生活指導などを行うものである。初等教育初期における教育格差を埋めることを目的に、修了時には特別教育庁による基礎学力認定を受けることになる。一方でPARMEは特別教育のニーズの広がりに対応して1991年に開始された制度で、特に必要性の感じられる児童に対して読み書き、算数の指導を強化して行うシステムである。PARMEでは普通学級の教員と専門教員が連携し、初等教育初期の児童を対象に指導が行われ、現在は首都、コバン、及びアルタベラパス州で実践されている。このように、政府による初期の特別教育は主に普通学級におけるインテグレーションを目指すもので、独立した教育機関の設立には至らなかった。
　1990年代になり、内戦が沈静化される時期になると、国内の特別教育機関の数は飛躍的に増えることになる。ろう児のための教育機関は1990年時点で11校であり、また1991年にはCPSGによる地方プロジェクトとして、ケツァルテナンゴ、サンマルコス、ウエウエテナンゴなど西部地域、サカパ、イサバル、チキムラなど東部地域を対象とした機関が、1994年にはレタルウレウなど南部地域を対象とした機関がそれぞれ創設されている。また、政府による特別教育支援拡大もこの時期に言明されている。　1998年になると、グアテマラにおける教育改革が始まる。これにより、各機関の統廃合が行われる中で、特別教育庁もSIMAC（Sistema Nacional de Mejoramiento y Adecuaciòn Curricular）に統合され、その機能は教育省内の特別教育組合、及びDICADE(Departamento de Programas y Proyectos de la Direcciòn de Calidady...